夏の終わりと貴方に告げる、さよなら


「嶺奈からして?」

 けれど、その予想が的中して嶺奈は気が動転した。

「で、でも。痛むかもしれないから」

「嶺奈がしてくれたら、一瞬で治りそう」 

 そう言って、彼は嶺奈からのキスを待っているようだった。
 
「……分かった」

 身体が羞恥で染まる前に、嶺奈は立花に近づく。そして、触れるか触れないかの僅かな口づけをした。

 彼から離れようとして、目蓋をゆっくりと開く。けれど、再び身体を引き寄せられ、口づけは深いものへと変わった。

「……っ!」

 咄嗟に唇を離した彼は、顔を歪ませ、口許に手を添える。やはり、まだ痛むようだ。

「ごめん……。まだ少し痛むみたいだ」

 申し訳なさそうに、呟く。
 
「だから、痛むって言ったのに」

 嶺奈はそんな彼を見て、少し咎めるように言う。