夏の終わりと貴方に告げる、さよなら

 だから、これ以上亮介に振り回されたくなかった。まるで、タイミングを見計らったかのような連絡に嫌悪する。

『嶺奈は……良平と付き合ってるのか』

 おそるおそるに問い掛ける亮介に、どんどんと苛立ちが募る。全てはもう終わったことだ。私はこんなことで立ち止まれないし、次に進まなくてはいけない。

 貴方を忘れて、幸せになる。

 だから、もう、彼氏面しないで欲しい。

「だったら何? 亮介にはもう関係のないことでしょ」

 精一杯の虚勢を張って、悪女を演じる。

『くそっ……。なんで』

 通話からは何かを殴ったような音が、微かに聞こえた。もしかしたら、壁かテーブルに自身の手を打ち付けたのかもしれない。

 相手も苛立っているのが解る。

 それでも、嶺奈は徹底して亮介を突き放す。

「話は終わり? なら、さよなら」

『まっ──』

 待って。そう言われる前に、嶺奈は無慈悲に通話を切断した。そして、亮介の新しい番号も拒否設定にする。

 これで、全てが終わる。

 この時は、そう思っていた。