「浮気の理由は知ってるの?」
ようやく絞り出した声は、酷く不安定で震えていた。
「ごめん、そこまでは分からない。けど、嶺奈のことを聞いたら、態度を急変させたのは覚えてる」
きっと、私の知らない間に、亮介が心変わりする出来事があったのだろう。これ以上は耐えられなくて、嶺奈は口を閉ざした。
彼女の無言の拒絶に、立花は話題を切り替えた。
「……嶺奈は俺のこと覚えてる?」
「どういう、意味」
言葉の意味を解りかねて、嶺奈は疑問に疑問を重ねた。
「一度だけ、会ってるんだよ。俺達」
「え……」
覚えてないよな、彼はそう言って、一瞬だけ寂しそうな顔を見せた。
「覚えてないならいい。その内に思い出してもらえたら」
一度だけ、会ってる?
そう言われても、思い当たる節なんて、一つもない。誰かと勘違いをしているんじゃ。



