夏の終わりと貴方に告げる、さよなら


「ああ……この写真、阿久津が待ち受けにしてたから、印象に残ってる。俺の彼女だって、いつも自慢してさ。だから、阿久津が婚約したって聞いたときも、君と結婚すると思ってた」

「待ち受けにしてたなんて……私、知らなかった」

 亮介の携帯を勝手に見たりはしなかったから、気付かなかった。

 不器用なだけで浮気をするまでは、本当は私のことを好きでいてくれたのかと、淡い期待をしてしまう。

 どうして、浮気なんか。

 私の何がいけなったの?

「なのに、いざ蓋を開けてみれば、あいつは岡田カンパニーの社長の娘と結婚した」

 立花によって、少しずつ明らかになる事実に、嶺奈はまた涙が溢れ始めた。

 カップに零れ落ちた涙が、珈琲に波紋を広げる。それはまるで、嶺奈の心を表しているようだった。

 知りたいけど、知りたくない。
 感情が責めぎ合う。