夏の終わりと貴方に告げる、さよなら

 ……これ、亮介から誕生日プレゼントで貰った物だ。

 彼が部屋に来たときに使おうとしたけれど、結局使う機会を見失って、仕舞い込んでいたのを忘れていた。

 もちろん、物に罪はない。けど、これを大切に取っておく必要もない。なら、最後に一度だけ使って処分しようと思う。

 彼の──亮介の思い出はもう要らないから。

「灰皿じゃないけど、これ使って」

 自分でも最低だなと思うし、子供っぽいことでしか亮介に抗えないなんて哀れだ。

 良平さんに皿を差し出したとき、罪悪感がちりちりと胸を焦がした。
 
「ありがとう。けど、なるべく吸わないように努力するよ」


 二人分の珈琲を用意して嶺奈は席に着く。

「嶺奈、コーヒー苦手じゃないのか」

 受け取ったカップを見て、立花は疑問に思ったのか、嶺奈のカップに視線を移す。

 中身は無論、立花と同じ珈琲だ。