夏の終わりと貴方に告げる、さよなら

 翌日、彼は約束通りに私を迎えに来てくれた。不安が杞憂で終わったことに少しほっとした。

 けれど、彼の口数がいつもより少ないのは、昨日のことがあるからなのか。

 退院手続きを済ませ、病院の玄関口で立ち止まる。この無言の空気に耐えられそうになかった嶺奈は、タクシー乗り場に向かおうとした。その腕をとっさに掴んだのは、無論立花だ。

「今、車持ってくるから、ここで待ってて」

 嶺奈に有無を言わせずに、立花は駐車場に向かった。
 
 私の自宅マンションに向かう車内でも無言が続く。駐車場に到着し、立花は車のエンジンを切った。

「荷物、部屋まで持っていく」

 彼はシートベルトを外しながら言う。
 
「そこまでしなくていい。ここで十分よ。……今日は迎えに来てくれて、ありがとう」

 礼を言って、車を降りようとする。その腕を捕まれ、引き留められたのは今日で二回目だった。
 
「俺から逃げないで」