夏の終わりと貴方に告げる、さよなら


「違う! 嶺奈を利用しようなんて、初めから思ってなかった。俺が守りたかったのは……守ろうとしたのは、嶺奈なんだよ」

 どうして、そこで私の名前が出てくるの。

 守りたかったって、どういうこと。

 彼の話を聞けば聞くほどに、謎は増えるばかりで頭痛がする。

「……意味が分からないわ」

 痛み出したこめかみに手を添えて、嶺奈は考えを整理しようとした。

 けれど、うまくまとまらない。

 そんな様子を見ていた立花は、嶺奈に無理をさせていたことに気付き、慌てて休むように促した。
 
「……今日はもう休んで。明日、退院出来るみたいだから、迎えに来るよ」

「待って。まだ話が──」

 痛みを堪え、彼を引き留めようとする。

 けれど、その問いは虚しくも彼の声によって掻き消されてしまった。

「俺も考えを整理したいんだ」

 そう言って、立花は嶺奈を独り残して、逃げるように病室を後にした。

 明日、彼は本当に私を迎えに来てくれるだろうか。そんな不安が胸によぎる。

 もしかしたら、もう会えないかもしれない。

 そんな気がして、嶺奈は静かに流れ落ちた涙を指で拭った。