夏の終わりと貴方に告げる、さよなら

 最初から、ずっと気になっていた。

 彼が私に近付いた理由。何度、訊ねても決して教えてはくれなかった彼の真実。

 もう、何を聞いても驚かない。
 決心なら、とうに出来ている。

 嶺奈は意思表示をするように、彼から目を逸らさず、真っ直ぐに見据える。

 やがて、立花も覚悟を決めたのか、嶺奈と視線を合わせ、こう言った。

「俺も阿久津が許せないから──」

 低い声で呟いた立花の瞳は、暗く沈んでいた。

 亮介と良平さんの間に何があったのか。私は知らない。けれど、彼も亮介を恨んでいたという事実に不思議と驚きはなかった。

 さっきの二人のやり取りを聞いていて、そんな気がしていた。良平さんも亮介に対して、嫌悪か憎悪を胸の内に抱いていることに。

「だから、私を利用しようとしたの?」