夏の終わりと貴方に告げる、さよなら

 慎重に言葉を選びながら、彼は乾いた唇を開いた。

 何を? そう問いたいのをぐっと堪える。
 無言を貫くのは、嶺奈なりのせめてもの反抗かもしれない。

「嶺奈が披露宴に出席するって聞いたとき、何の疑問も持たなかったんだ。てっきり、友人の結婚式だと思っていた」

「私に友人はいないわ」

 嶺奈は間入れず、きっぱりと答える。
 
 現にほら、見舞いに来てくれる人なんて、一人もいない。だから、良平さんが居なかったら、私はこんな時でも独りだった。

「阿久津が君に招待状を送ってることも知らなかった」

「最低な人って言ったでしょ」

 彼は嶺奈の言葉を聞いて、苦虫を噛み潰したような顔をする。

「……そうだな。俺が思ってた以上に、阿久津は最低なやつみたいだ」

 立花が目蓋を伏せたのは、嶺奈に対する懺悔か。
 
「良平さんは知ってたのね。……私が亮介の元婚約者だってこと。知ってて、私に近付いたの?」

「……弁解しても許してもらえないのは分かってる。けど、騙してたわけじゃない」

「なら、目的は何?」