嶺奈が街中で亮介の姿を見付けたあの日から、約一週間が経過していた。

 あの日の夜、ベッドで泣き疲れて眠った嶺奈を切なげな表情で見守っていたのは、無論、立花だった。

 彼は何を思い、何をを考えて、嶺奈を見守っていたのだろうか。


 いつものように仕事を終えて帰宅する。携帯には一通のメッセージが入っていた。立花からのメッセージかと思い、何気なく通知を開く。

 そして、その文面を見た瞬間。鈍器で殴られたような衝撃が嶺奈の身体を巡った。

『来月、披露宴をすることが決まった。嶺奈にも招待状を送ったから来てほしい』

 メッセージの相手は亮介からだった。

 連絡先を消していたから、メッセージを開くまで不審に思わなかった。

 亮介は私の気持ちをどこまで蔑ろにしたら気が済むのだろうか。

 ──私を恨んでるの?

 もう、これ以上ないくらいに、私は堕ちているというのに。

 突き付けられた事実に、嶺奈は立ち尽くして、明かりの消えた携帯画面を見つめる。

 このことを良平さんには言いたくなかった。

 心配も迷惑もかけたくない。だから、これは私だけで決着をつけようと思う。

 披露宴に行くことで、私は変われるだろうか。それとも、幸せを目の当たりにして、憎しみが増すだけなのか。

 復讐心が消えたわけじゃない。

 普通ならば元婚約者の披露宴に行くという選択肢は選ばない。けれど、嶺奈は披露宴に行くという選択肢を敢えて選んだ。

 自分自身に対する決着か。単なる意地か。

 その理由は、自分でも分からなかった。