夏の終わりと貴方に告げる、さよなら

 私はまだ、結婚なんてしたくない。

 それに、お父様の決めた相手なら、簡単に離婚も出来なくなる。

 死ぬまで、お父様に縛り付けられるのは、もう嫌だった。

 だから──。

「営業課で一番成績が良かった亮介さんに迫ったんです」

 美緒の父親は、『仕事は自分の足で取ってこい』という、昔堅気な思想を抱いていた。
 
 その信念があったからこそ、今の会社がある。何があっても自分だけは裏切らない。
 
 父親の絶対的な自信が、彼女の心を窮地に追い詰めてしまったのだ。

 自分が言うことは全て正しいのだと。


 父親を納得させるには、相応の実力がなければ、誰を連れて来ても、きっと一蹴されて終わってしまう。

 そして、美緒が目をつけたのは、営業課の亮介だった。
 
 この岡田コーポレーションの営業課で、一番の営業成績を修めている彼。

 この人なら、お父様も納得してくれるはず。許してくれるはず。

 そう思い込み、美緒は行動に移した。

 自分の見合いを破談させる為には、もう、なりふりなんか構ってはいられなかった。