夏の終わりと貴方に告げる、さよなら

 良平さんが望むのなら、私はどんな罰も受け入れると、あの時、自分自身に言い聞かせたはずた。
 
 それなのに、いざとなると怖くて彼の顔を見ることが出来なくなっていた。

「顔上げて、嶺奈」
 
 立花は俯いていた嶺奈の顔に触れて、そっと振り向かせる。そして、言葉を続けた。

「俺は……嶺奈が戻ってきてくれるなら、それだけでいい」

 彼の視線から逃れることは出来なくて、嶺奈は必死に涙を押し留めて、見つめ返す。

 止めどなく溢れ出す暗い考えから、掬い上げてくれたのもまた彼だった。真正面から思いを伝えられ、嶺奈の心の痛みは増していく。

 彼もまた、今にも泣いてしまいそうな表情をしている。

 お互いに傷付けあっても、そこに幸せは生まれないと、分かっていたのに。

 泣くのは、私じゃない。

 それでも、我慢していた涙は零れ落ちて頬を伝い、涙痕を残していく。