近づくと、彼女のふっくらとした唇が冷たい水に濡れ、艶っぽく輝いていた。

彼女が俺のために新たに1本取り出そうとするのを制止する。

「……それでいい」

「公親先生?」

彼女の手からペットボトルを取ろうとして、彼女の手に触れた。

華奢で、意外なくらい小さい手だ。

「あ…」

彼女の手ごと握り、ペットボトルを口に運ぶ。

半分くらい残っていたそれを、全て飲み干した。

「ハァ…………まだ飲む?」

「い、いえっ……あの、手を…」

小さな手と、濡れた唇。
俺はまだ酔っていたのだろうか…
気づいたら、妙に艶めかしく見えたその唇を自分のそれで塞いでいた。

「ん!」

唇を塞ぎながら、彼女の手からペットボトルを抜き取った。

行き場を失った彼女の手が、俺のスエットを掴む。

「きみちか…せん…」

「美由紀……名前」

「え」

「名前で呼べよ」

「あ、公親く…んっ」

呼べと言っておきながら、最後まで待てず再び口付ける。

「んっ、あ、だ、だめ……」

「……だめなの?」

いつもなら邪魔な眼鏡が今はない。
冷蔵庫を背に囲い込み、額をつけたまま、彼女の目を至近距離で覗き込む。

本当にダメなのか…
それとも…

潤んだ瞳に欲が見える。