「前田先生はああいう熱い人だし、面倒見もいいし、後輩への差し入れは毎年欠かさない人なんですよ。
だから、陸上部のどの学年の後輩でも、前田先生のことは知っていて、頼りにされていたんです。
特に美由紀のことは、親友の義妹ってこともあって、可愛がっていたと思います」

「なるほど…」

「仲は良いんですけどね、でも俺はただそれだけの関係だと思いますよ。
あの二人は先輩と後輩というか、師弟関係みたいな感じかな?」

「師弟関係…」

「ただねぇ…
ランサークルのメンバーの考えは違うんです」

「違うって?」

「元々、ランサークルを始めたのはあの二人なんです」

「はい?」

「だから、美由紀と前田先生が始めたんですよ」

「……」

「それもあって、美由紀はあの中では一番年若い教師だけど、前田先生と一緒に他のみんなを引っ張っていってるんですよ。
前田先生と息ぴったりに。
……それをね、お節介な先生方が誤解して。なんとか二人をくっつけようって動きがあるんです」

「マジか…」

「うん。まあ……どちらも知ってる俺としては、有り得ないと思うんですけどね?」

「有り得ないのか?」

「有り得ないです。だって美由紀は……」