「え」

「ん?」

「……その指、なんですか?」

「ああ! 気づいてくれたか」

「え? もう買いに行ったんですか !? 」

もちろんだ。

実はあの後、さらにもうひとつ
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「母親からだ」

「え? ああ、LINEですね」

来た道を戻っていると、母親からLINEが入っていることに気づいた。

『大切なのは、目に見える証拠よ』

目に見える証拠?

『今どこにいるのかわからないけど、百貨店が閉まるまで、あと2時間はあるわ。
ジュエリーショップで、ペアリングを買いなさい。』

ペアリング!

『お揃いの指輪をしていたら、誰もが納得するものなの。
まだ籍を入れていなかったとしても、そんなことは誰にも分からないから。
言葉は悪いけど、小道具って大事なのよ。必ず今日中に行きなさい』

なるほど。
とりあえず、籍を入れるまでに、周知用の小道具が必要ってことか。

『了解』

「どうしたの?
お義母さん、なんて?」

「美由紀、今から百貨店に行くぞ!」

「へ? なんで?」

「これだよ」

俺はそのままスマホを渡した。
隠さないといけないことではないし、彼女にも納得してもらわないといけないことだから。

「ああ! なるほど~!
そうだね、確かに指輪はわかりやすいかもしれない。
お義母さんすごいねぇ~」

……良かった、拒否されなくて。