本当はしなくてはいけない話が山積みだ。
アパートを引き払う話や、俺たちの正式な関係について…

俺はそろそろ結婚を考える歳だが、美由紀はまだまだ社会人1年目だ。
結婚なんて考えていないだろう。

一緒に住むには、せめて婚約はしないと学園内で許されない。

……話し合わなければいけないのだが、今はただ、美由紀の笑顔を見ながら、食事を楽しみたかった。


食べ終わり、スマホを操作していた美由紀が言った。

「梅林、ここから近いみたい」

「行ってみるか?
まだ明るいし、行きたかったんだろう?」

「いいの?」

「ああ」

今日はデートらしいデートをしたい気分だから。
……とは言わなかったけど。
美由紀が喜ぶなら、何でもしてやりたかった。

梅林は本当に近くにあった。
入場料などはなく、好きに見て回れるようだ。

「今は中咲きから遅咲きの品種の時期みたい」

「梅って、こんなに品種があったのか…」

「私も紅梅と白梅だけだと思ってたの。でもテレビでたくさんの品種が見られるってやってて。だから見てみたかったの。
すごいね〜! 本当に綺麗…」

「美由紀、そこに立って」

「え? あ、写真撮ってくれるの?」

わーい! と言いながら梅の前に立つ。

こういう、無邪気なところが可愛い。