リョウの痩せた指が、器用に餃子を包んでいく。

「……リョウ、慣れてるね」

「いや、初めてだよ」

「それにしては上手じゃない?」

「不器用ではないよ」

過去に何度か経験あるはずの私の方は、もたもたとひだを寄せた。

「ミクちゃんってさぁ――」

「言わなくていい!」

リョウは口の端を持ち上げて、言い方を変えた。

「小学生のとき、なんとかって刺繍にハマってたって言ってなかった?」

「刺繍は根性。不器用でもできる」

「俺、『不器用』なんて言ってないけど?」

ひと月近く、ドアに鍵が差さっていなかった。
何度かそっとドアノブを回してみたけれど開かなかった。
夜になっても部屋の灯りがついていなかったから、どこかへ出かけていたのかもしれない。

久しぶりに鍵が差さっていて、少し緊張しながら部屋に入ると、リョウは昨日の続きのように、餃子包むの手伝って、とタネの入ったボウルを押しつけてきた。
態度も何もひと月前と変わっていないけれど、痩せたし、髪の根元が黒くなっている。

同じ規格に包まれた餃子を、リョウはまたひとつお皿に乗せた。
その隣に、私も包みを乗せる。
リョウが目の端で、はみ出たニラを見た。

「味は一緒だから」

「俺、何も言ってないって」

キッチンに立ちっぱなしで三十分以上餃子を包んでいると、さすがに身体のあちこちが痛くなってきた。

「お腹すいたぁ」

首をぐりぐり回しながら言うと、

「出来た分先に焼こうか」

とリョウがフライパンに火を入れる。
スマホで焼き方を確認しながら、ぐるりと円形に並べ、水を入れて蓋をする。
油の跳ねる音が蓋の内側でこもっている。