「親のことで」
親。
この言葉を聞いて、反応する人はこの世に何人いるだろうか。
「僕、病気もってて二十歳までしか生きられない」
余命5年。
「でもこの間入院したのは病気のせいじゃない。親に殴られたのが原因」
嗚呼……。
「前刺された」
「逆に刺し返せばいいじゃん」
「痛すぎてできなかった」
力なく笑う彼の顔からは、心身に刻まれた傷痕の痛々しい姿は見られない。
だが、絶望も感じるその笑顔からはその悲劇を物語っていた。
「やられたらやり返すやろ。私はそうやって生きてきた」
人生は平等でなきゃ。自由がない世界なんて誰が住みたいと思うのさ。
「あのさ、公園で寝るのは変?」
「ホームレスかよ。公園だったら色々バレるだろ」
「あ、そっか」
中学生にそれが、一人暮らしができないのが苦しい。
家を出たいのに、街に行ってもどこに行っても結局は家に戻される。
「僕はADHDって病気もってて」
ADHD…?
だからあなたはそんな都合の良い考えをしてたんだね。
「私も親に殴られてるよ」
「大丈夫?」
「大丈夫」
人の心配より自分の心配をしなよ。
それに、あなたも分かってるはずでしょ?これは大丈夫で済む話じゃないってこと。
大丈夫じゃないって言ったら助けてくれるの?でも、
もう手遅れだよ。
大丈夫って言うのが当たり前になってるからそんな言葉、余計な一言だよ。
「私はHSPってやつ。私は元々溜め込むタイプだったんだけど、HSPのせいで突発性難聴ってのになって、左耳聞こえなくなった」
周りからの刺激がストレスになって、我慢し溜まり続けたストレスが耳という器官を破壊してしまった。
みんなの明るい声も半分で、聞こえるはずの大事な大好きな言葉も聞こえなくて……。
もうこの耳は治らない。聞こえないのが普通なんだから。
また我慢すれば、どこかを失ってしまうかもしれない。