もう夕方。


 そろそろお腹も空いてきたので、なにか作ろうかなー、とキッチンに向かった。


 お昼は簡単に済ませたが、夜まではそうはいかないよね。


 ここに来る前は料理は私担当ということもあり、料理には少しだけど自信があるんだ。


 でも材料があんまりないな。


 この後買い物にでも行こうかな。


 由紀子さんからご飯代もらってるからそれで買おう。


 そう思いながら出かける準備をしていると、ガチャッと玄関のドアが開いた音が聞こえた。


 あ、青峰くん帰って来た!


「あ、青峰くんおかえり!」


 でも彼から返事は返ってこなかった。


 青峰くんはそのまま無言で私の横を通り過ぎようとする。


「ちょ、青峰くん、お腹空いてない…?」


 私がそう言うと、青峰くんは立ち止まって私に背を向けたまま、


「…空いてる」


 と言った。


 私は返事をしてくれたことが嬉しくて、思わずテンションが上がった。


「ホント!?あ、何が食べたいとかある?」


 私、今ならなんでも作れそうな気がする…!


 すると青峰くんは少し間を置いて、


「…ハンバーグ」


 と言った。


「わかった!ハンバーグね!」


 短い言葉だけど、ちゃんと話してくれたのが嬉しい。


 少しは仲良くなれたかな?


 私は青峰くんに背を向けて、買い物に行こうとドアを開けた。


「…どこ行くんだよ」


 …え?


「あ、えと、ちょっと材料を買いに…」


 今まで青峰くんから話しかけられたことなんてなかったから、少し反応が遅れてしまった。


 なんか今日、嬉しいことばっかだなー。


 でもこの後に青峰くんから発せられる言葉も、想像していたものと180度違った。


「俺も行く」


 おれもいく…え、俺も行く!?


 あの女嫌いで今まで私とまともに話してくれなかった青峰くんが、私と一緒に買い物に…!?


「なんだよ、俺が行ったらダメなのか?」


 私が驚きやら嬉しいやらで百面相をしていると、青峰くんからそう言われてしまった。


「いやいや!い、一緒に、行きましょう…!」


 私は青峰くんの気が変わらないように、急いで言った。


 こうして私と青峰くんは、2人で買い物に行くことになった。