「うわぁ…なんかすごい!」


 あれからちょうど1週間。


 ついに遊園地の日がやってきた。


 昼の遊園地が閉園する午後7時くらいに遊園地に着いた。


 次々に遊園地をあとにする人混みに逆らって、私たちは遊園地の中へと歩みを進める。


「なんか不思議な感じがするね」


「なんで?」


「だってみんな帰ろうとしてるのに、私たちは中に入ろうとしてるんだもん」

 
「確かにな」


 中に入ると、そこら中がイルミネーションに彩られていた。


 周りにはほとんど人はいない。


 本当に世界が私たち2人だけになったみたいだった。


「そこに座ろうか」


 夜の遊園地では、ほとんどのアトラクションは乗ることができない。


 唯一乗ることができるのは、観覧車だけなんだ。


 私は翔くんにうん、と返事をして、近くのベンチに並んで座った。


「…今日さ、なんで誘ってくれたの?」


 無言が気まずくて、私から話し始めた。


「んー、なんとなく?」


 なんとなく?


 どういうこと?


 私は今日という日が来るまでに、翔くんが私を誘ってくれた理由を考えていた。


登校する時の何気ない会話を覚えてくれていたのも嬉しかったし、こうやって連れてきてくれたのも嬉しかった。


 でもその理由がなんとなく、なんて。


 私は怒ってしまいそうだったけど、今日だけは楽しむって決めたからこらえた。


「…そう、なんだ」


 そこで会話は途切れて、また気まずい時間が流れた。


 すると少し経って翔くんが、


「観覧車、乗ろうか」


 と言った。


 私はうなずいて、前を歩く翔くんについていく。


 私は思わず下を向いた。


 少し歩くと、七色に光る観覧車が見えた。


「2名様ですね、どうぞ」


 スタッフさんの誘導に従い、私と翔くんは向かい合って座った。