次の日。
私はカーテンの隙間から差し込む日の光で目が覚めた。
眠たい目を擦りながら体を起こし、天井に向かって体を伸ばした。
1階に降りようとドアを開けると、すぐそこの床に紙袋が置いてあった。
「なにこれ」
不思議に思って、その紙袋を手に取り、中を覗く。
「…えっ!?」
中に入っていたものに驚かされて、私の目は一気に覚めた。
「かっ、翔くん!なんで、これっ…!」
急いで階段を降りた私は、リビングのソファでいつものように本を読んでいた翔くんに言った。
お父さんと由紀子さんの姿はなく、たぶん出かけているのだろう。
「…そんなに驚くか?」
「驚くに決まってるじゃん…!」
私の部屋の前に置かれた紙袋。
その中に入っていたのは、私が前に翔くんに話した、"星の海遊園地"の夜のペアチケットだった。
…ん、ペア?
「待って、これ誰と?」
「俺と、くるみに決まってるだろ」
か、翔くんと2人…っ!?
待って待って、そんなのいろんな意味でやばい!
「だ、だ、ダメだよ!だって翔くんアイドルでしょ!?」
一緒にいるからかあんまり実感湧かないけど、翔くんはれっきとしたアイドルの青空ショウ。
私と一緒にいるとこなんか、写真に撮られたりしたら…。
「大丈夫だよ。…ほら、チケットにも書いてあるだろ?1日10組限定だって」
それでも9組は他の人がいるじゃん。
「いや、たぶんカップルばっかだろ。みんなそれぞれの世界に入ってて、俺らのことなんか見ないって」
そっか…そうだよね、夜の遊園地なんかデートスポットだもんね。
しかもペアチケットだし。
…って、いやいや、
「そのカップルだらけのところに私たち2人で行くの!?」
「この前さ、一緒に出かけてくれるって言ったじゃん。…これで最後にするからさ、一緒に行こう?」
なんて、悲しそうな目で言ってくるから。
「…わかった」
と言わざるを得なかった。
翔くんに対するこの気持ちを、無くそうとしてきたけれど。
このお出かけの時だけは、翔くんのことを好きな自分を楽しもうと決めた。
そして、これが終わったら、キッパリ諦めようとも。