次の日の土曜日。


 学校は休みなので、私はいつもより遅く起きた。


 朝食の良い匂いにつられて階段を降りると、ソファにはお父さんが座っていた。


「おはよう。…あれ、翔くんは?」


 リビングを見渡すが、目の前にいるお父さんとキッチンにいる由紀子さんの姿しか見えない。


「おはよう、くるみ。翔くんは出かけたよ」


 お父さんのその言葉に、私はホッとするような、でも寂しような、不思議な感情を覚えた。


 あのことを知ってから、翔くんに会うのが気まずい。


 でも、会いたい。


 そんな矛盾が、私の中で駆け巡る。


 でもその気持ちを押し殺して、


「そうなんだ」


 と、お父さんに言った。


 その日、翔くんは帰ってこなかった。