「ただいまー」
「「おかえり」」
家に帰ると、中からお父さんと由紀子さんの声がした。
リビングに行くと、そこに翔くんの姿はなかった。
「あれ、翔くんは?」
「翔はねぇ…バイト行ってるわ」
バイト?
「そうそう」
なんか、由紀子さんの喋り方が焦ってるような気がする。
今、翔くんいないけど、あのこと聞いてみようかな。
たぶん、違うと思うけど。
「由紀子さん、翔くんってもしかして…アイドルとかしてますか?」
私がそう言うと、お父さんと由紀子さんがビクッと肩を震わせた。
も、もしかして…。
すると由紀子さんは、もう嘘をついても仕方がないわねと言って、
「えぇ…翔はアイドルよ。黙っててごめんなさいね」
と、改めて私に言った。
やっぱり、そうだったんだ。
「…なんで黙ってたんですか」
もし最初から知っていれば。
たぶん、好きにならずに済んだのに。
「なんか、翔が黙っててって」
さっきの反応からして、お父さんはこのことを知ってた。
知らなかったのは私だけ。
そこまでして私に知られたくない理由ってなんなのだろう。
「そう、なんですね。…すいません、ちょっと2階に上がります」
私はそう言って、2人に背を向けた。
一瞬2人に目を向けると、由紀子さんは何か言いたそうな顔をしていた。
でも、私はお構いなしに階段を登った。



