「…るくん。翔くんっ!」
ショッピングモールを出て、私の腕をひいたまま早足で歩いていた。
私が声をかけると、翔くんは我に返ったのか、ピタリと足を止めた。
同時に私の腕をつかんでいた力も緩まり、私の腕は自由を取り戻した。
「どうしたの、翔くん」
私がそう聞くと、
「…ごめん、嫉妬した」
と、私に背を向けたまま言った。
嫉妬…?
「湊くんと出かけたことに?」
私がそう聞くと、翔くんはゆっくりとうなずいた。
すると翔くんはこちらを振り返って、
「…くるみ、俺とは2人で出かけたことないのに」
と言った。
え、でも…、
「一緒に買い物行ったじゃん」
2人きりで。
ハンバーグを作って食べた日。
あれがあったから翔くんと仲良くなれた。
だから今でも鮮明に覚えてる。
「それは違うよ。もっとさ、なんか他のとこ」
と、うつむく翔くん。
他のとこ?
今日みたいにショッピングモールとかかな。
そんな風に聞こうとしたけど、なんか悲しそうな、それでいて悔しそうな翔くんを見ていたら。
「なんか、ごめん」
という言葉が勝手に口から出ていた。
すると翔くんは少し顔を上げて、
「…今度一緒にどっか行くなら許す」
と言った。
「わかった」
と私が言うと、
「楽しみにしてる」
と言って、翔くんは優しく笑った。