お昼になり、私たちはフードコートにやって来た。


「桃瀬さん、はい、これ」


 空いてる席に座ると、湊くんは私に袋を渡してくれた。


「本当にありがとう…!」


 私は、嬉しくてその袋を両手に乗せてじっと見つめた。


「いーえ、喜んでもらえてよかったよ」


 本当に湊くんには感謝しかない。


「そろそろ人も多くなってくるし、早くご飯食べようか」


 周りを見ると、次々とフードコートに人が集まって来るのがわかった。


「そうだね」


 私たちは列に並んで、それぞれ好きなものを買った。


 私はお好み焼き、湊くんはカレーライスを買った。


「「いただきます」」


 お好み焼きを口に運んだ。


「んー、美味しい!」


 美味しくて夢中で食べていると、ふと湊くんが私に話しかけた。


「桃瀬さん、1個お願いがあるんだけど」


「お願い?」


 なんだろう。


「うん。…あのさ、桃瀬さんのこと名前でよんでもいい?」


 なんだ、そんなことか。


「全然いいよ!」


「よかった。…じゃあくるみちゃんで」


 なんか改めて呼ばれると照れるな。


「くるみちゃん、この後どうする?」


 私たちの今日の目的は、ピバさん。


 もう目的は達成されちゃったんだよね。


「うーん、せっかくだし、ちょっとお店回ってみる?」


 ショッピングモールとか、なかなか来れないし、このまま帰るのはなんかもったいない気がする。


「そうだね、そうしようか。…あ、くるみちゃん、ほっぺにソース付いてるよ」


 え、うそ!?恥ずかしい…。


 湊くんに言われてどうにかとろうとするけど、なかなかとれない。


「違う違う、ここだよ」


 と言って、湊くんが私の頬に手を伸ばす。


 私は固まって動けない。


 湊くんの指先が、私の頬に触れそうになる…その時。


「…おい」


 と、私の頭上から声が聞こえて、ガシッと湊くんの手首が誰かに掴まれた。


 見上げると、そこには翔くんがいた。


「えっ、か…じゃなくて、青峰くんがなんでここに!?」


 湊くんがいる手前、青峰くんって呼んだけど、まずここにいる時点でおかしいよね…。


「…なんで青峰がここにいるんだよ」


 そう言う湊くんの声は、今までに聞いたことないぐらい低かった。

 
 でも翔くんは湊くんの質問には答えずに、私の頬を拭って、私の右腕を掴んだ。


「…くるみ、帰るよ」


「えっ、か、帰るって…」


 翔くんは私を椅子から立たせると、私を引っ張って歩き始めた。


「え、ちょっと!?…ご、ごめん湊くん!」


 私は翔くんに引っ張られながら、背中越しに湊くんに謝った。


 どうしたの…?