それから湊くんは私に毎日話しかけてくれるようになった。


 最初は少し遠慮がちに話していた私も、話す回数を重ねていくうちに湊くんと自然体で話せるようになった。


「おはよう、桃瀬さん!」


「おはよう、湊くん」


 湊くんと挨拶を交わすのが、毎朝の日課になっていた。


「あ、桃瀬さん、もしかしてそれってピバさん?」


 そう言って湊くんは私のカバンにつけているマスコットを指差した。


「え、湊くん知ってるの?」


 ピバさんは目がパッチリと開いたカピバラで、私がずっと前から好きなキャラクターなんだ。


 これ、結構マイナーだし、高校になってからこれを知ってる人に会ったのは湊くんが初めて。


 なんか仲間ができたみたいで嬉しい…!


「俺さ、ピバさん結構好きなんだよね」


 と言って、湊くんはカバンの中から制服を着たピバさんを取り出した。


「あっ、それは今年の春限定のピバさん…!」


「そうそう!…あ、そうだ、この前駅近くのショッピングモールでピバさん見たよ」


 え、本当に!?


 最近お店でピバさん見ないからな…。


 今度見に行ってみようかな?


「桃瀬さん、今度の土曜日空いてる?」


「土曜日?…空いてるけど」


 たぶん、何もなかったはず。


 …でもなんでだろう?


「もしよかったらさ、一緒にピバさん見に行かない?」


「えっいいの!?行きたい!」


 1人だとビバさん見つけられるか不安だったし、湊くんもいてくれるなら大丈夫!


「よし、じゃあ土曜日、ショッピングモールに朝10時な!」