「…るみ、くるみ!そろそろ起きろ」


 青峰くんにそう言われて、私の意識は少しずつ覚醒していく。


 うーん…今何時?


 近くに置いてあった自分のスマホを手に取り、時刻を確認する。


「えっもう9時!?」


 時刻は朝の9時過ぎだった。


「くるみホント寝過ぎ。…昨日寝られなかったなんて信じられないな」


 青峰くん、ずっとここにいてくれたんだ…。


 そのおかげで、ちゃんとぐっすり眠ることができた。


「青峰くん、本当にありがとう…!って、ちょっと待って。今もさっきも、私のこと名前で呼んだ!?」


 起きたばっかで頭が働いてないのか、名前で呼ばれたことにすぐに気づけなかった。


「名前で呼ばれるの、イヤか?」


「いや、あの、そういうわけじゃ…。ちょっと突然でびっくりして」


 今振り返ると、青峰くんは私のこと1度も名字でさえ呼んでくれなかったから、急に名前なんてジャンプしすぎだよ…!


「じゃあいいだろ。…あ、くるみも俺のこと名前で呼べよ」

 
「…え!?」


 わ、私が青峰くんのことを名前で呼ぶ…!?


 青峰くんの下の名前って、えと、か、かけるくんだったよね。


 か、翔くん。翔くん。


 …いや、呼べないっ!


「む、無理です…」


「なんだよ無理って。…呼ばないと罰ゲームな」


 罰ゲーム!?


 なにされるかわかんないし、ちゃんと呼べるように頑張ろう…!


 青峰く…いや、翔くんはそう言うと私の部屋を後にした。


「青…いや、翔くん、どうしたんだろう急に…」


 出会った当初から、似ても似つかないほどに変わった翔くん。


 昨日から急激に仲が深まったように思える。


 私、なにかしたのかな…。


 打ち解ける魔法、みたいな。


 私にとって、翔くんの変化はそう思わずにはいられないほどだった。