「…ん」


 あれ、私寝てた…?


 まだ完全には開かない目をこすりながら体を起こすと、腰から膝にかけて何かがあるのに気づいた。


 それはブランケットだった。


 今まで寝ていたことにさえ気づいていなかったのだから、これをかけたのは私ではない。


 …となると、この家にいるもう1人、青峰くんがかけてくれたことになる。


 それがなんだか嬉しくて、自然と口角が上がった。


 立ち上がって窓の外を見ると、外はもう暗くなり、雨も降っていた。


 空も真っ黒だった。


 それを見て少し怖くなったその時、


 ゴロゴロゴロゴロ…ピカッ!!


 大きな音とともに、窓の外が一瞬明るくなった。


 う、うそ、雷…っ!?


 私はすぐにその場にうずくまる。


 私が小さい頃、お父さんが仕事で1人で家にいた時。


 雷のとても大きな音がして、怖くて、お父さんが帰ってくるまでずっと泣き続けたことがあった。


 それから私は雷が大の苦手。


 両手で耳をおさえても、音は少しも小さくならない。


 逆に大きくなっているようにさえ感じた。


 私、これからどうしよう…?


 ちゃんと寝れるかな…。


 その時、今までで1番大きな雷が鳴り、私の目からは今にも涙があふれ出しそうだった。


 1人は、無理…っ!


 私は震える足で階段を上がり、私の部屋の隣のドアを叩いた。


「…なに」


 中から、寝起きで不機嫌そうな青峰くんの声がした。


「あ、あの、か、雷…が怖くて…」


 怖さで、声までも震えていた。


 すると目の前のドアがガチャッと開いて、青峰くんが部屋から出てきた。


「雷、苦手なのか」


「うん…昔怖い思いしてそれからダメで…」


「そう。…とりあえず部屋、入って」


 と、青峰くんに私の部屋に入るよううながされる。


「えっ」


 私は1人になるのではないかと、不安になり青峰くんを見上げた。


「大丈夫。1人にはしない」


 青峰くんがそう言ってくれて私はとても安心し、自分の部屋に入ってベッドに横になった。


 私に続いて青峰くんも私の部屋に入り、私が横になったベッドの脇に座った。


 さっきとは違って1人ではないから、恐怖心も少し和らいだ。


 でも、まだ聞こえる雷の音が私に迫っている。


 ゴロゴロ…ピシャーンッ!!


 また一際大きな雷の音がして、私は布団を深く被った。


 ダメだ…まだ怖い…。


 私がガタガタと震えていると、右手に何かが触れた。


 そしてそれは私の手を暖かく包み込んだ。


「え、あ、青峰くん…!?」


 そう、青峰くんが私の手を握ったのだ。


「こうすれば、怖くないだろ」


 確かに、こうするととても安心する。


 でもちょっと恥ずかしいな…。


 最初は軽く握っていたが、何度も雷の音がして、怖さから強く握ってしまった。


 青峰くんは、私が強く握るとしっかり握り返してくれた。


 そしていつしか、私は深い眠りについていた。