冷酷な処刑人に一目で恋をして、殺されたはずなのに何故か時戻りしたけど、どうしても彼にまた会いたいと願った私を待つ終幕。

 王家の影の正体を知るなど、通常であるなら政治的な力も持たない公爵令嬢に出来るはずもない。でも、私には彼が存在している事も知り、名前などのいくつかのヒントを得ていた。

 その上に、この頃の私はいずれ王家となる身分だった。

 限られた者にしか立ち入れない家系図のある資料室にも、入室は可能だ。

 リチャードの影であるためには、彼は近い年齢の縁戚である必要があった。けど、その産まれた系譜なんかは、今は公式には抹消されて秘されているはずで……。

「……前王弟の、庶子……今ではもう、死んでいるはずのユーウェイン。あの人は、リチャードの従兄弟だったのね……」

「仕方の無い人だ。せっかく、人生をやり直すために時を戻したのに。なぜ、こんなところで俺のなんかのことを、調べているんですか?」

 暗く狭い資料室には、私一人しかいないはずだった。

 ここは、王家の者とそして極少数の限られた学者以外は入ることの出来ない場所のはずで……。

 声の方向を見れば、あの時の処刑人。私を殺した人だった。薄暗い影の中に居て、溶け込んでしまいそうな黒髪と黒衣。

 美しい、紺碧の瞳。