「もしかしたら……貴女も、記憶を取り戻してないだけで。俺と同じように転生者の一人なのかもしれません。俺が知っている悪役令嬢のセシルは、もっと高慢な性格で嫌な女だったはずでした。俺が長い期間かけてずっと観察していても、嫌なところなど何一つ見つからなかった。素直で可愛くてリチャードが何故あちらを選んだのか。理解に苦しむ……ええ。貴女こそが、俺のヒロイン役に相応しい」
ここは薄暗く、視界が悪い。だから、彼は私の顔が赤くなっていることには気が付かないはずだ。
もしかしたら、このまま上手くいけばユーウェインは、私の想いに応えてくれるかもしれない。けれど、私は近い将来に捨てられるとは言え、現在は王太子のリチャードの婚約者でブラッドフォード公爵令嬢だった。
「ねえ……待って。でも、貴方が私を連れて、ここから逃げれば。きっと、多くの優秀な追手がかかるわ。王家の影が、王太子妃となる女性を攫うのよ。王家の威信を掛けて、必ず探し出すでしょう。貴方が一際強かったとしても、多勢に無勢。それに、私にはとても追手とは戦えない。人を一人守りながら。長い距離を逃げ切るなんて、とても現実的ではないわ」
彼と私の逃避行は、危険極まりない道行きになることだろう。
恋に浮かれたままで、幸せに生きて死んでいくのも、それはそれで甘美な結末かもしれない。けど、私は出来ればやり直しの人生の中で、日陰の身分だったユーウェインと幸せになる方法を選びたかった。
「貴方の言い分には、一理ありますね。何か対案が?」
「ええ」
頷いた私を見て、彼は満足そうに微笑んだ。
ここは薄暗く、視界が悪い。だから、彼は私の顔が赤くなっていることには気が付かないはずだ。
もしかしたら、このまま上手くいけばユーウェインは、私の想いに応えてくれるかもしれない。けれど、私は近い将来に捨てられるとは言え、現在は王太子のリチャードの婚約者でブラッドフォード公爵令嬢だった。
「ねえ……待って。でも、貴方が私を連れて、ここから逃げれば。きっと、多くの優秀な追手がかかるわ。王家の影が、王太子妃となる女性を攫うのよ。王家の威信を掛けて、必ず探し出すでしょう。貴方が一際強かったとしても、多勢に無勢。それに、私にはとても追手とは戦えない。人を一人守りながら。長い距離を逃げ切るなんて、とても現実的ではないわ」
彼と私の逃避行は、危険極まりない道行きになることだろう。
恋に浮かれたままで、幸せに生きて死んでいくのも、それはそれで甘美な結末かもしれない。けど、私は出来ればやり直しの人生の中で、日陰の身分だったユーウェインと幸せになる方法を選びたかった。
「貴方の言い分には、一理ありますね。何か対案が?」
「ええ」
頷いた私を見て、彼は満足そうに微笑んだ。



