笑顔のまま「きっと大丈夫だよ。あの強面最恐陛下、エスターちゃん以外に優先することなんてないんだから」と励まされる。
やっぱり、私ひとりで悩んでいたってしょうがないのかも。一緒にいられるだけで奇跡みたいなものなんだから、多くを望みすぎてはいけないわ。
求愛行動がないのがさみしいです、だなんて恥ずかしくて口にできないもの。
その日の夜、王都の城に戻るとラシルヴィスト様は先に帰って来ていた。
シャツに薄手のガウンを羽織り、大きなソファに腰掛けてこちらを見ている。
「ラシルヴィスト様、おかえりなさい」
「ああ。エスターは、今日は古城に行っていたのか?」
「はい。皆さんお元気そうでした」
隣に座って他愛のない話を続けているうちに、時計の針が進んでいく。
肩にたくましい腕がまわされて、視線が交わった。
そのとき、長い指が私の髪を耳にかけて、そのまま髪を解いて一房もてあそぶようになでられる。


