ドミニコラは仕事で各国をまわっており、自由奔放ながらも長く生きて世界を見てきた薬師界の先駆者でもある。
仕組まれたドッキリながらも刺激を受けたらしいシルヴァンは、貪欲な探究心と純粋な好奇心に満ち溢れていた。
「ドミニコラには自ら頼みこめ。二年は猶予をやろう。……それと、公務のときは必ず戻れ。連絡もなしに放浪しようものなら、手段を選ばず追っ手をとばすぞ」
父の冷静で無愛想な承諾に、シルヴァンは深くうなずいた。
そのやりとりを見ていたヴォレンスが、続いてラシルヴィストに声をかける。
「俺も、騎士団の遠征や訓練に参加してもいいですか? もっと剣術の腕を磨きたいんです」
「だめだ」
「あ″? なぜですか!」
「お前の剣戯の相手は俺がしてやる」
獣の騎士団を統べる最恐の父にしごかれると察したヴォレンスは、噛みつきかけた牙をしまった。
「〝剣戯〟だと……?」とつぶやいた兄はいまだに子ども扱いをされて苛立ちを募らせた様子だったが、エスターはそんなふたりをニコニコと見守る。


