エスターが笑うと、儀式に向けた緊張が高まった双子が凛とした顔でうなずく。
シルヴァンは自分とよく似た容姿の兄へと視線を向けた。
「谷に突き落とされたときはどうなるかと思ったけど、ヴォレンスがいて心強かったよ」
「なに似合わないセリフを言ってんだ。……俺も、ひとりだったら町に着いた後から八方塞がりだっただろうな」
真っ直ぐに気持ちを返したヴォレンスに柔らかな笑みを浮かべたシルヴァンは、やがて父へ向き直る。
「……父さん。ここでひとつ、僕から頼みがあります」
ラシルヴィストがかすかにまつ毛を伏せたとき、シルヴァンは物怖じせずに続けた。
「王族の儀式が終わったら、ドミニコラさんの仕事に付いてしばらく旅に出てもよろしいでしょうか?」
「旅だと?」
「はい。今回の試練で、近隣諸国の情勢や民の暮らしにまだまだ疎いと実感したんです。僕の素性を知らない人達ばかりの世界は新鮮で、自分の目と耳で世界を学べば、さらに王族としての資質を高めるいい機会になると思いました」


