「なにか欲しいのか?」
「ううん、見ていただけ」
「……どれが気になるんだ?」
無言で小さな髪飾りを指さすラミュリの銀髪の合間から、ヴォルランの耳がのぞいた。
同じ波長で淡々と話す父と娘を微笑ましく見つめるエスターの近くで、双子の兄達は顔を見合わせる。
「ねえ、兄さん。予想だけど、数日後にはあの髪飾りが城に届くよ」
「だろうな」
警戒心が強く、シャイでめったにわがままを言わない妹ラミュリをどう甘やかすかが、一家の密かな楽しみになっていた。
エスターや双子の兄達もついつい末っ子の姫を可愛がってしまうのだが、甘やかし筆頭はラシルヴィストである。クールな顔から察することはできないが、溺愛心が溢れているのだ。
ラミュリはサラサラした銀髪を肩甲骨まで伸ばし、父譲りの黄金の瞳はどんな宝石よりも美しかった。
性格も父親と似ており、十歳のわりに達観していて、にこりともしない姿は精巧な人形のようだが、たまに鈴が鳴るように笑う。
その一瞬を見逃すまいと、獣の一族は必死なのである。


