悪女のレッテルを貼られた追放令嬢ですが、最恐陛下の溺愛に捕まりました【2】



 珍しく動揺したシルヴァンの問いかけに、エスターは笑みをこぼす。


「観光に来たわけではないわ。来週に控えたあなたたちの王族の儀式で身につける装飾品を揃えに来たの」


 母の答えを聞いて、双子の脳裏に昨夜のダイニングバーでの記憶がよみがえった。

 声をかけてきたふたりの女性と会話していたとき、この炭鉱町は宝石の原石も発掘され、装飾品が名産品であると教えてもらった。


「王都での儀式で私たちが身につけた宝石は、とても人気になるらしいわ。試練に協力してくれたお礼もかねて、代々ここで装飾品を取り揃えるの」


 王族は本来、特定の企業や組織の広告塔になることはないが、儀式で身につける装飾品は昔から炭鉱町の職人から贈呈される取り決めがあり、代々専属の宝石職人が王族用の品を作っているそうだ。

 簡単に言えば、有名人が身につけた品やブランドが飛ぶように売れるのと同じ仕組みである。

 バロッグが口にしていたメリットがなんなのか気づいた双子が試練の全貌を理解したとき、ラシルヴィストは銀髪の少女に歩み寄った。