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バロッグさんに言われるがまま炭鉱町に戻ると、賑やかな商人のテントが並ぶ市場で人だかりが見えた。
その中心にあったのは、店番の女性とふたつのシルエットである。
「エスター様。そちらのエメラルド色の首飾り、とてもよくお似合いです」
「ありがとう。空にかざすと光が透けて綺麗ですね。これをいただこうかしら」
薄い布地のベールをかぶりキラキラと輝く首飾りを試着している女性は、エスターだ。
穏やかに店主と話す彼女の隣では、背丈が百四十センチほどの銀髪の少女が、無言ながらも興味津々な様子でアクセサリーを見つめている。
「母さん!? ラミュリ!?」
ヴォレンスが目を見開いてふたりを呼ぶと、鉱山から戻った三人に気がついたエスターは表情を明るくさせた。
「ああ、よかった。レンテオさんが向かったときはどうなることかと心配したけど、試練は無事に終わったのね」
「終わりました、けど……どうしてここにいるんです? 家族旅行のつもりじゃありませんよね?」


