悪女のレッテルを貼られた追放令嬢ですが、最恐陛下の溺愛に捕まりました【2】



「レンテオさん!」


 ヴォレンスが目を輝かせて先頭の騎士の名を呼ぶ。レンテオは双子の無事を確認して、ほっと胸をなでおろした。


「ああ、有事に備えて町に控えていたとはいえ、本当に予想外の展開だよ。ご無事でなによりです」

「やっぱり、この〝試練〟ってやつは、親父の差し金だったんですね?」


 ヴォレンスが眉を寄せたとき、獣の騎士団を統べる雄々しいシルエットが現れた。銀の髪が外套のフードからのぞいている。

 それはちょうど話に出ていたラシルヴィストだ。

 息子達は全てを理解して睨むものの、その視線を涼しげにかわした父は薄い唇を開く。


「王族の試練に部外者が立ち入るのは前代未聞だが、及第点だ。よくおさめた」

「どういうことか説明してください、父さん」


 シルヴァンが低い声で尋ねると、ラシルヴィストは表情ひとつ変えずに答えた。


「この炭鉱町は、歴代の王族が試練のために訪れる場所だ。双方の利益のために協力関係にあるといったほうが正しいだろう」


 民の声を聞き、労働環境や貿易、市場の動きを肌で感じられる西の町は、町の人たちが全員仕掛け人だったのである。