「レンテオさん!」
ヴォレンスが目を輝かせて先頭の騎士の名を呼ぶ。レンテオは双子の無事を確認して、ほっと胸をなでおろした。
「ああ、有事に備えて町に控えていたとはいえ、本当に予想外の展開だよ。ご無事でなによりです」
「やっぱり、この〝試練〟ってやつは、親父の差し金だったんですね?」
ヴォレンスが眉を寄せたとき、獣の騎士団を統べる雄々しいシルエットが現れた。銀の髪が外套のフードからのぞいている。
それはちょうど話に出ていたラシルヴィストだ。
息子達は全てを理解して睨むものの、その視線を涼しげにかわした父は薄い唇を開く。
「王族の試練に部外者が立ち入るのは前代未聞だが、及第点だ。よくおさめた」
「どういうことか説明してください、父さん」
シルヴァンが低い声で尋ねると、ラシルヴィストは表情ひとつ変えずに答えた。
「この炭鉱町は、歴代の王族が試練のために訪れる場所だ。双方の利益のために協力関係にあるといったほうが正しいだろう」
民の声を聞き、労働環境や貿易、市場の動きを肌で感じられる西の町は、町の人たちが全員仕掛け人だったのである。


