開けた採掘場にはあらゆる方角から道が続いており、侵入者が入りやすい仕組みになっているらしい。
双子の鼻が、かすかに香る血の匂いを嗅ぎとった。
「シルヴァン。アレも仕込みだと思うか?」
「いや……もしもそうなら相当な演技派だね」
トロッコに積んだ鉱石を漁っていた男達は、この場に現れた双子に気づいて視線を向ける。
彼らは手に短剣やサーベルナイフを持っており、扱い慣れている印象を受けた。
「ん……? このジイさんの仲間か?」
「いや。この顔、見覚えがありますよ……! エピナントの王子です!」
手下と思われる男が、黒髭を生やした四十代くらいのボスに答える。
この町に来てはじめて素性を当てられた双子は、今までと違う空気を悟って警戒心を強めた。
「王子だと? なぜそんな大層な身分のお方がこんな埃くさい炭鉱にいるんだ」
「わ、わかりませんが、たしかに本人かと。噂の獣の王に顔立ちが似ています」


