悪女のレッテルを貼られた追放令嬢ですが、最恐陛下の溺愛に捕まりました【2】



 開けた採掘場にはあらゆる方角から道が続いており、侵入者が入りやすい仕組みになっているらしい。

 双子の鼻が、かすかに香る血の匂いを嗅ぎとった。


「シルヴァン。アレも仕込みだと思うか?」

「いや……もしもそうなら相当な演技派だね」


 トロッコに積んだ鉱石を漁っていた男達は、この場に現れた双子に気づいて視線を向ける。

 彼らは手に短剣やサーベルナイフを持っており、扱い慣れている印象を受けた。


「ん……? このジイさんの仲間か?」

「いや。この顔、見覚えがありますよ……! エピナントの王子です!」


 手下と思われる男が、黒髭を生やした四十代くらいのボスに答える。

 この町に来てはじめて素性を当てられた双子は、今までと違う空気を悟って警戒心を強めた。


「王子だと? なぜそんな大層な身分のお方がこんな埃くさい炭鉱にいるんだ」

「わ、わかりませんが、たしかに本人かと。噂の獣の王に顔立ちが似ています」