悪女のレッテルを貼られた追放令嬢ですが、最恐陛下の溺愛に捕まりました【2】



「……なあ、なんか変じゃないか?」

「変?」

「すんなりと進みすぎている。町について情報がすぐに耳に入って、それらしい悪役が立ち塞がって、これからボス戦って……不自然だろ?」


 兄の考察にシルヴァンもあごに手を当てる。


「たしかに。普通なら、情報収集に一日か二日はかかってもおかしくないよね。いくら儀式の前だからって、町の人達が皆、僕達の素性に気づかないのも引っかかっているんだ」


 足音だけが聞こえる洞窟にヴォレンスの低い声が響く。


「なあ、まさかこれって親父が仕組んだ……」


 言いかけた次の瞬間、野太い男性の声が双子の鼓膜を震わせた。


「ぎゃあああっ!」


 過敏な獣人の聴覚が、迷路のように入り組んだ洞窟で声の方角を察知する。

 駆け足で声の主を目指して進んだとき目に飛び込んできたのは、縄で体をぐるぐる巻きにされた小太りの男性と、先程のツルハシ軍団よりも明らかに悪人のオーラがする複数人の男性の姿だ。