「……なあ、なんか変じゃないか?」
「変?」
「すんなりと進みすぎている。町について情報がすぐに耳に入って、それらしい悪役が立ち塞がって、これからボス戦って……不自然だろ?」
兄の考察にシルヴァンもあごに手を当てる。
「たしかに。普通なら、情報収集に一日か二日はかかってもおかしくないよね。いくら儀式の前だからって、町の人達が皆、僕達の素性に気づかないのも引っかかっているんだ」
足音だけが聞こえる洞窟にヴォレンスの低い声が響く。
「なあ、まさかこれって親父が仕組んだ……」
言いかけた次の瞬間、野太い男性の声が双子の鼓膜を震わせた。
「ぎゃあああっ!」
過敏な獣人の聴覚が、迷路のように入り組んだ洞窟で声の方角を察知する。
駆け足で声の主を目指して進んだとき目に飛び込んできたのは、縄で体をぐるぐる巻きにされた小太りの男性と、先程のツルハシ軍団よりも明らかに悪人のオーラがする複数人の男性の姿だ。


