兄の声にシルヴァンが「ヴォルランだけど……?」とムッとしたところで、屈強な男達が全員地面に伏せた。
剣を腰に戻したヴォレンスは、じんわりと首ににじんだ汗をぬぐっている。
「さて、あなた達のボスがどこにいるか教えてもらいましょうか」
「ぐ、ぬ……。奥だ、この洞窟の中にいる」
鋭い視線で射抜いたヴォレンスが、大旦那の居場所を突き止めた。
シルヴァンは、出稼ぎに来た男性に優しく声をかける。
『あなたとあなたのお仲間が、また鉱山で働けるように僕たちがお願いしてきます。ここにいては、またトラブルに巻き込まれるかもしれませんから、今日はご自宅にお戻りください』
『任せてしまっていいのかい……? ありがとう、恩にきるよ』
炭鉱町に帰っていく背中を見送ったシルヴァンは、兄とともに洞窟へと歩きだす。洞窟の中は一定の間隔ごとにランプが下げられていて移動は難しくない。
砂埃っぽい空気にシルヴァンが体を震わせたところで、ヴォレンスがつぶやいた。


