険悪な雰囲気に眉を寄せた双子が歩み寄りながら様子を窺っていると、言語の違う男性が突き飛ばされて地面に倒れ込んだ。
土まみれのツルハシを向けられている。
とっさに駆け出したのはヴォレンスであった。素早くふたりの間に入って剣を抜く。
「あ……? なんだ、お前は」
「事情はよくわからないが、落ち着いてください。この人、丸腰じゃないですか」
「部外者は引っ込んでろ」
倒れた男性の背中を抱いたシルヴァンは優しく声をかける。
『お怪我はありませんか?』
『はい。あなた、私の言葉がわかるのですか?』
『ええ。西のラグナンド国の方ですね? 訛りがあるから、カヤナ地区の出身ですか?』
『すごい! 大正解です。前の地主さんに雇われてここで働いていたのですが、少し揉めてしまって……』
シルヴァンは兄の背中に向かって話しかけた。
「彼は元々この鉱山で働いていた人らしい。仕事を求めて来たけど、追い返されたって」
「ああ、会話が聞こえた。どうやら、この横暴な男がバロッグさんの部下らしいな」


