ぴしゃりと扉を閉められて、ヴォレンスは前髪をかき上げた。
「……どうやら、相当厄介な男らしいな」
「だね。でも、余計に父さんの言っていたトラブルがバロッグさん関係って可能性が高くなったよ」
ふたりは町の北東にそびえ立つ鉱山を見上げて顔をしかめる。銀髪が風になびいて外套が音を立てた。
「いくか、シルヴァン」
「ここで諦めたらなにも解決できないね」
覚悟を決めたふたりは揃って歩きだし、炭鉱町を抜けて鉱山を目指す。少し歩くと地面に草がなくなり、だんだんゴツゴツした岩肌が見えてきた。
人工的に作られたレールが敷かれており、採掘した石を運ぶトロッコがある。
そのとき、鉱山にぽっかりと空いた洞窟からふたりの男性が出てくる様子が視界に入った。なにやら騒がしく揉めている。
「おい、お前らの仕事はないと言っただろ!」
『〜〜、〜〜!』
「はあ? なんと言っているのかわからないな。ここはバロッグ家の所有地になったんだ。自由に出入りできると思うなよ!」


