悪女のレッテルを貼られた追放令嬢ですが、最恐陛下の溺愛に捕まりました【2】



 小声でのやりとりに、ヴォレンスは喉を鳴らした。

 急に静かになった兄をよそに、シルヴァンは彼女達に尋ねる。


「ここは炭鉱の採掘で栄えた町なんですよね? 僕たち、観光しようにも詳しくなくて。色々と教えてくれませんか?」

「いいわよ。ここは資源の他にも宝石の原石が掘り出されたりするから、装飾品の生産も盛んなの。お土産に買うといいわ」


 すると、それを聞いたもう片方の女性が眉を寄せて続ける。


「でも、最近は採掘が思うように進まないわよね。ほら、例のバロッグ家が立ち入り制限をしているじゃない?」


 ヴォレンスが「バロッグ家?」と顔を上げたとき、彼女は答えた。


「去年この町にやってきた商人よ。大金持ちかなんだか知らないけど、最近、鉱山を無理やり買い取ったとかで利益を独占しているの。そのせいで失業した人も大勢いて、なんとなく活気がないのよね」


 それを聞いたヴォレンスが、勢いよく立ち上がってテーブルから身を乗り出す。


「俺、そのバロッグ家の人に会いたい! ……です! 道案内をしてくれませんか!?」


 すると、目を丸くしたふたりの女性は、表情をほころばせて首を縦に振った。


「いいわよ。お兄さん、元気いっぱいで可愛いわね」

「か……っ! ……わ?」


 席を立って歩きだす女性達に続いて、シルヴァンも兄の外套を引っ張る。


「動揺して固まらないで。牙をしまって。大丈夫。可愛くないから、早く行こう」