小声でのやりとりに、ヴォレンスは喉を鳴らした。
急に静かになった兄をよそに、シルヴァンは彼女達に尋ねる。
「ここは炭鉱の採掘で栄えた町なんですよね? 僕たち、観光しようにも詳しくなくて。色々と教えてくれませんか?」
「いいわよ。ここは資源の他にも宝石の原石が掘り出されたりするから、装飾品の生産も盛んなの。お土産に買うといいわ」
すると、それを聞いたもう片方の女性が眉を寄せて続ける。
「でも、最近は採掘が思うように進まないわよね。ほら、例のバロッグ家が立ち入り制限をしているじゃない?」
ヴォレンスが「バロッグ家?」と顔を上げたとき、彼女は答えた。
「去年この町にやってきた商人よ。大金持ちかなんだか知らないけど、最近、鉱山を無理やり買い取ったとかで利益を独占しているの。そのせいで失業した人も大勢いて、なんとなく活気がないのよね」
それを聞いたヴォレンスが、勢いよく立ち上がってテーブルから身を乗り出す。
「俺、そのバロッグ家の人に会いたい! ……です! 道案内をしてくれませんか!?」
すると、目を丸くしたふたりの女性は、表情をほころばせて首を縦に振った。
「いいわよ。お兄さん、元気いっぱいで可愛いわね」
「か……っ! ……わ?」
席を立って歩きだす女性達に続いて、シルヴァンも兄の外套を引っ張る。
「動揺して固まらないで。牙をしまって。大丈夫。可愛くないから、早く行こう」


