それは、たくましい王になるためではない。いつか優秀な弟が治めるであろうエピナントを隣国の侵攻から守る騎士団の一員になりたいのだ。


「一応、僕の王位継承権は第二だからね、兄さん」

「同じ日に生まれたくせに一もニもあるか。俺はお前以上に王にふさわしいやつはいないと思っているよ」

「本当かなあ」


 自分が王になりたくないがために言っていることを疑ったシルヴァンは、静かに眉を寄せる。

 そうこうしているうちに、王都の城へと馬車が着いた。

 出迎えの騎士につられてエントランスに入ると、双子を出迎えたのは白衣の男性である。


「久しいですね、お元気でしたか」


 王宮に仕える薬師のドミニコラだ。よく母から話を聞いていたし、何度か顔を合わせた機会がある。

 シルヴァンの表情が、ぱっと明るくなった。


「ドミニコラさん、お久しぶりです。なぜここに? 母さんとお仕事ですか?」

「いえ、今日は主に用があって古城から出向いたのです」


 双子が目を丸くすると、ドミニコラは穏やかに答える。


「来週の儀式の件ですよ」