出会った者の視線を奪う美形の双子は、近隣諸国でも名の知れた王族であった。

 冷酷な獣の噂は今も健在で、その息子が注目されるのは必然だろう。

 それ以上に、兄のヴォレンスは剣術に優れ、弟のシルヴァンは聡明で外交に長けている。

 足りないところを補う相性の良さは、双子ならではの通い合ったなにかがあるように感じられた。

 シルヴァンが、窓の外を眺めて呟く。


「今日は特に出迎えが多いよ。どうしてだろう」

「王族の儀式が近いからじゃないか? もう一週間後だ」


 王族の儀式というのは、王子が十八歳になる年に行われる公務である。王子の成人を祝い、王が正式な後継者を民に示す重要な儀式だ。

 民の期待も高まっているらしい。


「俺は、王座には興味ない。騎士団に入って、レンテオさんみたいな強い男になりたいんだ」

「またその話? 命の恩人を慕うのはいいけど、勉強をサボっていい理由にはならないんだからね」


 ヴォレンスは、古城でレンテオ騎士団長の剣さばきを見てから、目を輝かせて後を追うようになった。そして、時には父と剣を交えて鍛錬を積んできたのである。