「見て、シルヴァン様だわ。今日も麗しい」

「隣のヴォレンス様も凛々しくて素敵。ああ、一度でいいから目が合わないかしら」


 王子としての公務を終えて馬車で城へと帰る道は、城下町の住人で溢れていた。

 普段は民衆に向けた月一の演説でしか目にすることのない双子の王子に目が釘付けだ。

 熱烈な視線に微笑を浮かべて手を振りかえすシルヴァンは、腕と足を組んで目を閉じる兄にため息をつく。


「少しは愛想を良くしたらどう?」

「そういうのはお前の担当だろ。媚を売るみたいで嫌いなんだ」

「民の声に応えているだけさ。悪態をついているけど、恥ずかしいだけだろ?」


 硬派な兄が素直になれない性格であると理解しているシルヴァンは、にこやかに返す。

 毛先がほんのりとピンクに色づく銀の短髪に、切れ長の青い瞳。まだ成長期ではあるものの、筋肉質な体躯は父と同じく長身になるであろう百七十センチ台だ。