かつて、エスターさんが獣の姿の主と日向ぼっこをしていた庭で、今は息子達が父を枕にして眠っていた。

 なんとも愛らしい光景に、エスターさんも在りし日を思い出して頬が緩んでいる。

 彼女が歩み寄ると、主はヴォルランの姿のまま黄金の瞳をゆっくり開く。


「お昼寝ですか」

「ぐるる……」


 主は喉を鳴らして答えた。

 ちらりとこちらを見るが、特に気にせずに彼女の差し出した手に擦り寄る。

 おや、仲睦まじい様子を見せつけられている?

 冷酷な獣と名高い主も相変わらずエスターさんには甘いようだ。凛々しい表情は変わらないが、その眼差しは優しい。


「ふふっ、ふたりは安心しきって眠っているわ。私も少しだけ一緒に寝転ぼうかしら」

「がぅ」

「いいじゃないですか。少しだけ」


 エスターさんは夫の柔らかな毛並みに体を預け、息子達を抱き寄せる。

 しばらく無言でその様子を見つめていた主も、やがて諦めたようにエスターさんの腕に顔を寄せて目を閉じた。

 なんて幸せな光景だろう。王族を見守ってきた者として、込み上げる思いがある。

 爽やかな風が頬をなで、穏やかな日の光が獣の家族に降り注いだ。