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《ドミニコラ視点》


「ドミニコラさん、お久しぶりです。すみません、息子達が騒ぎを起こしたと聞きました」

「ああ、エスターさん。お気になさらず。彼らは犯人を捕まえるのに貢献したのです。怪我も軽い擦り傷で済んだようなので安心してください」


 二時間ほど経った頃、古城にエスターさんが到着した。レンテオからの連絡を受け、公務を済ませて様子を見に来たようだ。

 綺麗に巻いたピンク色の髪を肩口でひとつに縛り、王族の紋章の入ったケープを羽織っている。

 久しぶりに会うものの、主同様、その美貌は健在だ。


「息子達は、今どこに?」

「こっちだよ」


 不安げな表情の彼女に笑いかけ、古城の庭へと案内する。

 すると、僕の後ろを歩いていた彼女が「あっ」と声を上げた。やがて、鈴の音を鳴らすように可愛らしい声で笑いだす。

 古城の裏手に広がる庭では、白い大きなシルエットがあった。ヴォルランの姿の主が白い毛並みを風に揺らしている。

 そして、横たわる体の足の間ですやすやと寝息を立てるのはふたりの息子だ。

 無防備に手足を投げ出して仰向けになるヴォレンスと横向きで丸くなって眠るシルヴァンの頬には涙の跡がある。