「ふぁぁん! えーん……っ、あぁぁ……っ」


 声を上げて泣く双子は、頬をピンク色に染めてひたすら涙を流している。

 ドミニコラとレンテオは「あちゃぁ……」と目配せをした。

 ラシルヴィストはまつ毛を伏せて少しの間彼らを見つめていたが、肩と脇にひとりずつ抱き上げて古城へと歩きだす。

 レンテオはそんな獣の親子を見ながら苦笑した。


「双子の王子くん、怖いパパに叱られてギャン泣きですね」

「ええ。あの泣きだす前の間で、こちらまで心がキュッとなります」


 背中を眺めるドミニコラは穏やかな表情でつぶやく。


「最恐陛下も、息子達の前ではただの父親ですね」

「ははっ、たしかに。ああ見えて、王都では尻尾であやしているのをよく見ますよ」


 そう言って笑顔で腕を組んだレンテオに、ドミニコラも口角を上げた。

 そして忠臣のふたりと騎士達は、獣の親子を微笑ましく眺めて古城への帰路についたのである。