悪女のレッテルを貼られた追放令嬢ですが、最恐陛下の溺愛に捕まりました【2】



 よろよろと歩く男性にシルヴァンは眉を寄せた。

 そのとき、双子に気づいた男性が目の色を変える。


「ついてる! 獣人のガキだ……! これで俺はあの草を買える!」


 瞬時に本能で身の危険を察して、背を向けて駆けだす。しかし、男性も異様な執着を見せ、ものすごい速さで追って来た。

 おぼつかない足元で、途中で木の根っこにつまずいて転んでも、ズボンが破けて血が出ても気にならないようだ。


「な、なんだあのおじさん!」

「ぼくたちをつかまえるつもりだよ!」


 次の瞬間、シルヴァンが石につまずいて地面に倒れ込んだ。

 立ち止まって振り返るヴォレンスの視界に、男性に抱きかかえられる弟の姿が映る。


「ふはは、これは上物だ。奴隷としてこきつかってもいいし毛皮も高く売れるぞ。ほら、完全な獣の姿になってみろ」


 恐怖で声も出せないシルヴァンは、抵抗しようとしても腕から抜け出せない。